Ultimate 5月20日臨時号 【藤田京弥B.A.S.S.オープン参戦記】

Vol.01 渡米~ジェームスリバー練習編

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「遠賀川で勝ったのが遠い過去のことに思えます」

 藤田京弥プロの2022シーズンは、413日のJBトップ50遠賀川戦を優勝するという最高の形で幕を開けた。その優勝決定の瞬間からわずか5時間後、藤田プロは勝利の実感を噛みしめる間もなく福岡空港から成田空港へ飛び、深夜にPCR検査を受けて就寝。目覚めて陰性判定を確認すると、正午の便でアメリカへ発ったのだった。

 既報のとおり、今シーズンの藤田プロは、JBトップ50(全5戦中4戦)とB.A.S.S.オープン(ノーザンとセントラルの2地区計6戦)に海をまたいでエントリーしている。B.A.S.S.オープンは、JBでいうところのマスターズにあたる、トップカテゴリーへ進むための登竜門だ。1地区約200名の選手のなかで、年間成績上位3名のみに、翌シーズンからのエリート出場権が与えられる。

 さて、準備もままならない状態でアメリカに入国した藤田プロは、その翌々日にはテキサス州からバージニア州ジェームスリバーに向けて単独で移動開始。左ハンドルに右車線走行、道路標識も異なれば言葉も通じない異国の地で、21ftのバスボートを牽引して2日半の道のり。いまの藤田プロにとってはすべてが試練のはずだが......、「前回(初めて)の渡米でカリフォルニア州からテキサス州まで丸2日運転したので、とくに問題はありませんでした」と意外にあっさりしていたのが印象的だった。

「初めて」の洗礼

 しかし、本当の試練はここからだった。

 藤田プロが予定していたプラクティス(練習)は5日半。元から充分とはいえない練習期間だったのだが、現地に入った藤田プロをまず待ち受けていたのはバッテリートラブルだった。アメリカで戦うバスボート用に導入したリチウムバッテリーとチャージャーが初期不良で作動しなかったのだ。バスボートのバッテリーはエンジンスターター、エレキ、魚探といった極めて重要なツールの動力源である。が、リギングしたメカニックを頼ってテキサス州へ引き返している時間はない。そこで現地のバッテリーディーラーを訪ねるも問題箇所の特定には至らず、マリーンショップへも出向いたが結果は同じだった。藤田プロはしぶしぶ鉛製バッテリーを3台購入。余計な出費、ボートの重量増(※リチウムに比べて鉛製バッテリーは重い)、何より練習時間のロスが痛かった。

 しかし、まだ練習は開始できない。次はフィッシングライセンス(※遊漁証)の購入でトラブって、釣具店や行政機関などをたらい回しにされるはめに。ようやく態勢が整ったときには15時を回っていて、16時に"初めて"ジェームスリバーにマイボートをラウンチングすることができたわけだが、プラクティスに割ける貴重な時間をほぼ丸1日失うことになってしまった。

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バッテリートラブルが解消した翌朝にエレキの微調整。「日本で使っているボートと完全に同じセッティングにしたいんです」と藤田プロ。わずかな誤差も許さず、プラクティスの時間を削ってでも完璧に仕上げた

広大な水域に戸惑う

 ジェームスリバーは、アメリカ東部を流れ、大西洋に"直結"している。日本の多くの河川と違って河口堰がないジェームスリバーは、潮の干満によって水位が大きく変動するタイダルリバーだ。藤田プロは、タイダルはもとより、リバーフィールドもほぼ未体験。おまけにトーナメントエリアが広い! 本流だけでも上流から下流までゆうに100kmを超えるうえに、厄介なことに各所にクリーク(支流)が接続している。トラブルで4日に減ってしまったプラスケジュールで全域を見て回るのは到底不可能だ。また、干潮時にはシャローが干上がってしまうため、航行にも気を遣わなくてはならない。事実、ジェームスリバーにほど近いマリーンショップの店員によると、見えない障害物にエンジンを当てたり、浅瀬に乗り上げたりして身動きが取れなくなるケースが少なくないとのことだった。

プラクティスで得た手応え

 ジェームスリバーで過去に開催されたトーナメントの記録を見ると、「チカホウミニー」なる名前のクリークが頻出する。チカホウミニーは、ジェームスリバーの下流域にある流入河川で、しばしば入賞者を輩出しているエリアだ。1年前のオープン戦でも、ブランドン・パラニュークがチカホウミニーをメインエリアにして優勝。もちろん藤田プロもそのことはリサーチ済みで、チカホウミニーのプラクティスに2日間を費やした。水質は泥濁り、バンクはアシに縁取られたストレッチもあれば、水中からサイプレスツリーが乱立する場所もある。朽ちた桟橋や冠水植物など、チェックすべき要素もさまざまだ。

「スイムベイトで5Lb(≒2300g)くらいのバスも釣れたし、魚の数も多い印象です。ただ、チカホウミニーに行くだけでも会場から40分くらい掛かるんですよ」

 ウエイインサイト(会場)からチカホウミニーリバーの入り口までは約70km、さらにチカホウミニーの上流域までは30km以上の距離がある。障害物の多い水域での長距離航行はリスクが高いうえに、単純に釣りをする時間を削ることにもなる。

 プラクティスの前半を終えた段階では、明確な手応えをつかめないでいた藤田プロだったが、後半に入ると5尾で20Lb(≒9kg)を超えるウエイトをマーク。前年のジェームスリバー戦では、2日間合計31Lb(≒14kg)を釣れば予選突破。もちろん、自然が相手ゆえに同じように行くとはかぎらない。が、それでもジェームスリバーの20Lb超えが、ストロングなウエイトであるのは間違いない。

「野池みたいなところを見つけたんです。本当に小さなエリアなんですけど、そこでいいのがけっこう釣れました」

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ジャームスリバーで初めて釣ったバスは3Lb半(≒1600g)のグッドコンディション。日本から持ち込んだジグ&ポークをプロトタイプの73H-STで操って食わせた

 こうしてたしかな感触を得た一方で懸念材料も。

「バスが見えたからルアーを投げてみたんですけど、すぐに逃げて行っちゃいました。もしかしたら、けっこうプレッシャーが高いのかもしれないな......」

 プラクティス終盤の1日半で、藤田プロは同じような条件のエリアを探したが、「野池」を超える場所は見つからないまま練習を終了。希望と不安がない交ぜの精神状態で、つい10日前に自らあらためて証明した"JBトップ50最強"は、米国ツアーデビューの時を迎えた(Vol.02に続く)。

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ライブスコープに映る謎の魚の正体をたしかめるべく、藤田プロの右腕になりつつある61Lプロトタイプでジャパニーズフィネスを投入。正体はバスだった

[ジェームスリバー戦メインタックル]

■ネコリグ用

ロッド:61L(スピニングロッド/プロトタイプ)

リール:イグジストLT2500S-XHクイックドラグノブ仕様)

ライン:UVF ソルティガセンサー 12ブレイドEXSi 0.6

藤田プロコメント:61L(スピニングロッド/プロトタイプ)は、JBトップ50遠賀川戦のウイニングロッドです。ワームのノーシンカーリグからI字系やシャッドのようなプラグまで、なんでもOKな一本です。ラインは、フロロカーボンだったら4Lbをベースに6Lbまで、PEなら0.6号が基準になります。プロトタイプですが、すでにドンピシャなフィーリング。ルアーの操作性の高さは感動するレベル、なのにキャスト時や魚を掛けてからはよく曲がってくれる。現時点でもう何も言うことがない出来です。

■ネコリグ/パワーフィネス用

ロッド:68MH(スピニングロッド/プロトタイプ)

リール:イグジストLT2500S-XHクイックドラグノブ仕様)

ライン:UVF モアザンセンサー 12ブレイドEXSi 1.5

藤田プロコメント:68MH(スピニングロッド/プロトタイプ)はパワーフィネス用ですが、詳細はまだ固まっていません。組み合わせるリールは、61Lもこの68MHも、すべてクイックドラグノブ仕様のEXIST LT2500S-XHです。ラインは、68MHにはUVFモアザンセンサー12ブレイドEX+Siの1.5号です。このPEラインが、強くて、ガイドの抜けもよくて、正直、これまで使ってきたPEの中でずば抜けてイイです。人生が変わりました(笑)。

■リーダーレスダウンショット用

ロッド:73H-ST(ソリッドティップベイトロッド/プロトタイプ)

リール:ジリオンSV TW 1000XHL

ライン:スティーズフロロクロスリンク20Lb

藤田プロコメント:73H-ST(ソリッドティップベイトロッド/プロトタイプ)は、ジグスト用として開発をスタートしたのですが、これが使ってみると意外になんでもできる。軽いルアーの操作性も高いですし、もちろんパワーがあるのでカバー撃ちやビッグベイトもこのロッドでやっています。

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ラピッズブレード3/8ozラピッズテール4.6in

ロッド:リベリオン701MFB-G

リール:ジリオンSV TW 1000XHL

ライン:スティーズフロロクロスリンク16Lb